重松神社と日��神社のホームページ

〜安南郡日��庄八幡宮の由来〜

　昔豊後(ぶんご)の豆田（まめだ）という所に一人の神主がいた。神事については日本では比類なき人であったそうだ。さて、社家の出身であったので、ある時京都に上ることがあり、その時、二条殿に入れこんで、大変多くの賄賂(わいろ)を差出した。結果、四位(しい)の位にまで昇り、正親町守(おおぎまちのかみ)という官名までいただいた。

　その後、神主は豆田村に戻って、新しく神社を建立した。結婚に縁がない女の人を結婚させたり、また美男と結婚させたりした。金がない人には大金をもたらしたり、病気病難から人々を救ったりもした。そして、種々のお守などを出して、今までに聞いたことがないくらい大流行をし、大もうけをした。

　これに対して、他の神主たちはその神主をねたみ、役人に申し入れ書などを差し出したりした。が、その神主は役人を取り込んでしまっており、飛ぶ鳥も落さん程の勢いであった。このような風評がある中、その村の庄屋・常太郎の娘・房が八左衛門という富家に嫁入りした。嫁入して1年が過ぎたのだが、その姑はなかなか意地が悪いばあさんであった。その嫁（娘・房）は、神主のことをふと思い出し、親里のこの神主に密かに話し、「私どもの姑を祈り殺してくだされば、金50両、また100両でも差し上ます」と申し出た。そして、この神主は運がつきてしまったのか、100両に目がくらんだのか、21日間の火物たちをして、日夜の宮ごもり（ご祈祷）をした。

　およそ10日ほどすると、この鬼婆（姑）は大熱を出し、体中に小さなできものがたくさん出てきて、とても臭く、雪隠(せっちん)のようであった。その嫁は、「信心があるから願ったとおりになった」と、その喜びようは人の目にもはっきりわかるものであった。ある日、一家で（鬼婆を）看病しているときに、その嫁はそのまま寝てしまって、天罰であろうか、寝言で自分の悪事を簡単にしゃべってしまった。そのため親里へ帰されたのだが、その病人（鬼婆）は亡くなってしまった。このことにより、この嫁は御上(おかみ)に捕らえられ、その神主についていた神職たちには逃げる者がいたり、また捕らえられる者もいた。（捕えられた者は）色々な責め苦にあい、ついに成敗(せいばい)された。この神主も追放され、正親町守を俗名に改めることになった。

　さらに、神主については、元和(げんな)6年5月26日、うつろ舟に乗せられ、神社の神様とともに「流れ者の刑」に処せられることとなった。ただし、その刑の日数は150日間であった。ところが150日も経たない、同年8月7日に大風のため、この舟は日��瀬戸に流れ着き、さらに三崎の鼻の岩にまもれ、翌8日の朝に舟は砕けてしまった。おかげで神主は舟を脱出することができた（「流れ者の刑」を終えた）。そして、神主は三崎山に神様を抱いて、かけ上った。しかし、うつろ舟にいなり様を残してしまったので、「ああ、残念なことだ」と思っていたところ、向の山のふもとに光る物を見た。それをたよりに行ってみれば、残念なことに、いなり様は岩の中でもまれて、破損していた。この時からその岩を「いなりこぼし」というようになった。この年から村中の者はこの神主に帰依(きえ)し、神様を氏神様としてお祀りし、この神主をここ大浦の神主としたのである。なお、光るものを見つけた場所を光るものを見た証拠の場所（道）であることから「証拠道（しょうこみち）」というようになった。